あなた二次元は遠慮すると仰いましたぢゃありませんか。私にはそれが理解できない。あなたが二次元を遠慮する理由が私に分からないやうにあなたも私が理解できないのでしょう。仕様がない。それは、もう仕様がないことなのです。
 ああ、もう、死んでしまいたい。
 三次元の何が嫌って聞くのがまず間違いです。だってそれぢゃ三次元にも良いところがあるとでも言うようぢゃあないですか。三次元など有り得ません。存在そのものが悪。生きるという日常的行為からして三次元は悪です。撲滅すべきだ寧ろ産まれてくるべきでなかったのです。何を考えたかイザナギとイザナミは私の体を作り出し、まあ別のお国では神様がアダムとイブをつくりだし、また別のお国では別の方法で人間を産んで、全く人間を作り出した神様というのは何を考えていたのでしよう。詰まらぬ浅知恵を身に付けた猿風情が身の程知らずな領域まで手を出し始める前にその存在を滅ぼすべきだったのに。ましてその集合体である私など。
 もう死んでしまいます。余りに醜すぎるので。これ以上の生き恥を晒す趣味は御座いません。
 人間なんて全く地球上に必要性の無い存在だとは思われませんか。産まれた時からやれ戦争だ、食い物だ。醜い。なんと醜い。男は女を漁って、女は男を漁って。時には男も男を漁って、女もまた然り。なすことは大差ないのにその数が少ないからと言ってそれを迫害して、まあなんと醜いこと。別に私は同性とねんごろになる趣味なぞ、小指の爪の先の甘皮のじうぶんの一の量ほども御座いません。肌が瞳が髪が違うというだけで化け物扱い。恐ろしいのは認めましょう。見劣りするのも認めましょう。だからといって争う必要がどこぞにあると言うのですか、別に良いじゃないですか。好きでそんな風体に生まれたわけではないのです。肌の色すら受け入れられないなんて、器も狭いどころの話ではありませんよ。三次元ではこんなことざら、いいえ当たり前のようだ。しかし二次元は違いますよ。同性が同性に抱かれるのは全て愛故の行為、初めはそんなつもりも毛頭なくとも、「くやしい……っ!でも感じちゃう………っ(ビクビク)」なんて嫌よ嫌よも好きのうちなんて結局は両思い大団円に収められる。肌の色だって眼の色だって全てが思いのまま、指のまま。殴り合ってもこちらまで痛みは感じませんし、現実に起こっていることではありませんからそれほど気に病むこともない。領土問題食料自給率政治不信その他もろもろ、二次元には存在しません。まさに楽園天国桃源郷、パラダイスユートピアシャングリラ。さらに男は視覚からでも十分性的快感を感じ取れるのだそうです。
 三次元なんていらないですよね。二次元万歳。
 気持ち悪いですよ。三次元なんて。大団円どころか、終わりすら来やしません。人間は次から次に産まれ続けて、今にも地球を食らいつくすと皆さん懸念しているぢゃあございませんか。今日だって集まったのに、いつものように喧嘩して、結局収集は尽きませんし。
 ねえ本当に醜いのです。三次元なんて。
 産まれた時から争って、血みどろの争いを続けて、奪って裏切って殺して、報復されて、そして生き残れば被害を受けたと敗者から絞りとろうとあれやこれや駄々をこねる。常に自分本位、国益優先。嘘をつくのは日常的行為、騙すのも日常的行為、常に腹の探り合いで気が抜ける暇もありません。私には探る腹さえない時期もありましたが。下腹に開いた風穴は治りましたとも、おかげさまで。でもまだじくじくと痛むのです。あれから時間も経ちましたが、全部癒えたわけではない。時折まだじくじくと痛みます。なんどきか忘れ去られることではあろうとも、まだ忘れられないこともある。ねえあなただってそうなのでしょう。まだひどく痛む傷があるのでしょう。二次元は違いますよ。二次元はその目の前の平面だけ、それだけが全てです。過去もない、未来もまだない。目の前に繰り広げられる瞬間それが全てです。それ相手に騙すこともなくまた騙されることもない。傷つけられたとしても、こちらから接触を断てば触れる機会はまるでない。三次元のどこが信用出来ると言うのですか。友達になっても裏切られるし、家族になっても裏切られる。自分の意見を言えだのと、言えるはずもないのです。私は生かしてもらっている黄色い猿風情でしかないのです。ああ嫌だ。こんなことならまだ鎖国している間にいっそ舌を噛みきって死んでしまえばよかった。
 ということで死にます。死なせてください。
 三次元なんて嫌いですよ。いいところなんて一つだってありゃしない。痛いし、気持ち悪いし、嫌よ嫌よも好きのうちなんてそんなのは攻めのこじつけです。気持ちいいのは攻めばかり、受けの身にもなってください。二次元なら、受けのほうが気持ちよさそうですけど、痛いし気持ち悪いし、いくら自分の意見を持たない私といえども自尊心はずたずたです。一体いつから私をこんな対象に考えていたのかと思うと身の毛が弥立つ。握手から抱擁から慰めから励ましから、この日のための布石のようです。というより、即物的すぎます。気に入ったから、好きだから。好きだから抱くのですか。これだから外は、三次元は駄目です。ちゃんと順序があるでしょう。手が触れ合って赤面するような場面があるべきです。モノローグも流れない。あなたが私をどんな風に思っているのか知れない。怖いです、一生引きこもっていれば良かった。それともこうして一夜を共にするのもあなたの国ぢゃ大したことも無いのでしょうか。口吸いや挨拶と変わりない日常的行為なのですか。だとしたらこれはかつてない強力なカルチャーショックです。年寄りには付いていけません。余りに衝撃的過ぎるので死にます。もしくは鎖国します。南セントリアにでもなります。気持ち悪いです。やっぱり二次元がいいです。三次元は痛いし怖いです。とりあえず気持ち悪いです。
 ……気持ち悪い……
 今ならアスカの気持ちもよく分かるような気がします。気持ち悪いです。いつから私をこんな風にしようとしていたのですか。想像すると、本当に気持ち悪いです。ちょっと……泣かないでくださいよ………泣きたいのはこっちです。これだから三次元は。とにかく泣くならまずその粗末な棒を抜いてください。責任もちゃんと取ってくださいよ。後今度あなたの18禁総受け本書きますから。